中国語をベースとした言語類型論・認知言語学研究叢書(1)

語順類型論と介詞理論

WORD ORDER TYPOLOGY and A THEORY OF ADPOSITIONS

価格:¥4,070税込

  • 編著:劉 丹青
  • 杉村 博文、大西 博子、島村 典子、鈴木 慶夏、西 香織、橋本 永貢子

  • 発売日:2013/11/10
  • 出版社:日中言語文化出版社
  • ISBN:978-4905013808

類型論という研究分野の有意義さと面白さがギュッと詰まった一冊

言語類型論の著作と言えば、英語の原著やその和訳も、国内の研究者が日本語で書いたものが簡単に手に入る。しかし、それらはどれも多くの言語からデータを採集し、その観察と統計によって含意的普遍性を追求したものである。そのような標準的な研究方法による研究成果に対し、このたび、言語の通時的変化に普遍性を見るユニークな研究書をお手元にお届けする。著者は、中国社会科学院言語研究所所長の劉丹青氏で、中国語における述語動詞にかかる名詞句が、最初は動詞の後ろに位置していたものの、数百年の時間の経過に伴い、その多くの種類は動詞の前に移動して定着することになった。その結果、そのような名詞句における「格助詞」の性格が、最初の前置詞型一色からだんだん「前・後置複合型」に変わってきているという現象を丁寧に指摘している。そのうえ、そうした現象の背後に、仲介項中間原則、語順調和性原則、時系列類像性原則、情報構造原則などが複雑に絡み合いながら、機能していることを検討している。チョムスキーは言語という一言語を通して、普遍文法を極めることができると信じて頑張っているが、言語類型論の立場から追求する普遍性も、一言語の言語接触による変化の軌跡を通して語ることができるという可能性をこの著書は示してくれている。