1972年9月の「日中共同声明」のなかで、「日中両国は、一衣帯水の間にある隣国であり、長い伝統的友好の歴史を有する」と使われている。本書のタイトル『一衣帯水』はこの一文から名付けられた。共同声明の精神を守り、エッセーというジャンルにより、歴史上ならびに現代の実生活において友好的に交流した実在の人、本当にあった話を紹介し、また、異文化間コミュニケーションというプロセスにおいて生じがちな考え方の相違や善意による誤解を解説していくことによって、おたがいの理解を深めていくことを主旨としている。本書を、日中両国の間で経済、貿易、文化交流活動に従事する方および相手国の言語と文化を学んでいる学生、さらにはより広い層の方々にも読んでいただきたいという思いから、両言語を左右の頁に対照とした形をとっている。
本書は前作玄号に続く第四巻である。
今回載せるエッセー3本は次のようになっている。
・江戸期に拳法を伝えたとされる陳元贇
・石塚喜久三の『纏足の頃』を読んで
・陸羽の故郷・天門訪問記
最後のエッセーは、次のように締めくくられている。
「一衣帯水、海を隔てながらも隣国である日中が、今後も多方面で親しく、共同研究を進めていけるように願い、力を尽くしたいと思う」
これはまさに小誌の編者の気持ちそのものでもある。